大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和51年(ネ)1770号 判決

控訴人(原審参加人) 高野朝五郎

右訴訟代理人弁護士 設楽敏男

同 阪本清

脱退一審原告 佐野親蔵

被控訴人 鈴木留吉

右訴訟代理人弁護士 村田豊治

被控訴人補助参加人 鈴木芳雄

右訴訟代理人弁護士 扇正宏

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人に対し、金二、〇四三万円及びこれに対する昭和四六年五月二日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は、控訴代理人が、甲第二六ないし第二八号証を提出し、当審証人鈴木芳雄の証言、当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、被控訴代理人が、甲第二六号証の成立は不知、第二七、第二八号証の各成立は認める、と述べたほかは、原判決の事実摘示と同じであるから、これを引用する(ただし、原判決二枚目裏八行目の「約二三五三坪」を「約三五三坪」と、同一〇行目の「山林一筆」を「山林二筆」と、六枚目表一行目の「同浅田茂」を「同津田茂」と、同二行目の「同狭間信光」を「同狭間信一」と、同三行目の「補助参加人鈴木芳雄の供述」及び六枚目裏七行目の「補助参加人の供述」をいずれも「原審証人(ただし、補助参加後)鈴木芳雄の証言」とそれぞれ改め、六枚目表七行目の「証人」の次に「(ただし、補助参加後)」を加える。)。

理由

≪証拠省略≫によると、脱退一審原告佐野親蔵と日本マッシュルーム株式会社との間で昭和三六年一二月二五日、佐野が同会社より同会社代表取締役水上良雄所有名義の鎌倉市雪ノ下字大御堂所在の農地等一三筆につき控訴人主張の内容の売買契約が成立したことは認められるが、右契約において、被控訴人が買主に対し売主の負担すべき債務につき保証したとの点については、原審証人高野朝五郎の証言、原審における控訴人本人の供述には、右の点にそう部分があるけれども前掲各証拠にてらしとうてい措信できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。もっとも、≪証拠省略≫によると、本件売買契約書の立会人欄には、「立会人」なる印刷文字にわざわざ「保証」の二字を加えて「立会保証人」とし、被控訴人外三名の者が署名捺印していることが認められるが、≪証拠省略≫を総合すると、右立会保証人のうち被控訴人外一名は売主側の、補助参加人外一名は買主側の各仲介人として本件売買契約に立会ったものであるところ、本件売買契約の買主は当初田所重平が予定されていたのに契約当日になって突如、脱退一審原告に変更されたため売主側に不安があったこと、他方買主側も交渉の過程で売主の人柄につき不信感を持つに至ったため、立会人四名が協議のうえ、自分達の仲介料も右契約当事者から確保するとの意味も含めて、本件売買契約は、契約書記載の当事者間に成立したことを証明し、かつ、その売主と買主の双方が本契約を確実に実行するよう、立会人らがそれぞれの立場で努力することを明らかにする趣旨で「保証」の二字を加入したものであり、それ以上に出て、立会人らが売主側の債務につき保証することを意味するものではないこと(なお、前掲甲第一号証の本件売買契約書には、立会保証人に関するなんらの条項もないこともこのことを裏付ける。)を認めることができる。

のみならず、≪証拠省略≫を総合すると、売主の日本マッシュルームが買主の佐野より本件売買手付金の一部として受け取った額面金一〇〇万円の約束手形二通が、振出人北浜興業株式会社の倒産によって不渡となることが確実となったため昭和三七年三月二七日ごろ、契約当事者、立会保証人等の本件売買契約関係者及び控訴人が集まり協議した結果、売主が買主側にそれまで受領した手付金三八〇万円の倍額を戻すことを約して本件売買契約を合意解約したのを契機に、立会保証人四名は、参会者一同の了解の下に本件売買から一切手を引いたことが認められ(る。)≪証拠判断省略≫

そうすると、控訴人の本訴請求は、その他の点を判断するまでもなく理由のないことが明らかであるから、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 田畑常彦 丹野益男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例